映画「あぶない刑事」村川監督らが30年の思いを語る
28日付日刊スポーツに掲載の舘ひろし(65)柴田恭兵(64)浅野温子(54)仲村トオル(50)の“レジェンド4人対談”に続き、
村川監督、脚本の柏原寛司氏、撮影の仙元誠三氏、製作総指揮のセントラルアーツ社長の黒沢満氏が、「あぶ刑事」30年の思いを語る。
-11年ぶり…そして、最後の「あぶ刑事」です
村川
キャスティングする方も、待っていたという感じ。適材適所というのか、役に合った人が集まるもんだなぁと。私は非常に満足です。11年ぶり…いいんじゃない? と。
黒沢
おふたり(舘と柴田)が、まず60代になっているわけですから…どういうふうに変わっているかと、心配は正直あったんですが、お会いしたり話したりしていると、全然昔と変わっていない、力を持っている。
これは一気にいこうと、監督と柏原さんにお願いしました。
仙元
数年前から、年取った「あぶ刑事」をやろうと、黒沢さんと周りと話していて、実現したら、俺がやると決めていた。
一昨年の12月に「やるぞ」と言われました。
-「あぶ刑事」の古き良きエッセンスに先端の映像…今、生きている新たな「あぶ刑事」を見た思い。新しくしようと意識したこと、逆に残したエッセンスは?
柏原
脚本的には、「あぶ刑事」は毎回、ワルをどうするかというのが1番難しい。
今回は南米系のギャング。
一昨年、米ロスに行った時に、知り合いに「今、1番、危ないのは、どいつだ?」と聞いたギャングを、名前を変えてそのまま使いました。
ワルが魅力的じゃないと、2人も魅力的にならない。
その辺が、うまくいった原因ではないでしょうか?
(幹部を演じた)吉川晃司さんが良かったです。
-「あぶ刑事」史上最強の敵・キョウイチ・ガルシアを演じた吉川晃司について
村川
敵役は必ず必要なもので、あの人は2人(タカとユージ)に対して、きちんとそのポジションをルックス含め、芝居もちゃんと演じていました。
たまたま(バイクの練習中に)左足関節外果骨折というアクシデントもありましたけども、
逆に言うと足を引きずること自体が、(演じたガルシア)今まで生きてきたキャリアの1つとして、ちゃんと入れましょうと、すぐに提案しました。
柏原
(撮影)スケジュールも、ケガを治すのを待って時間を遅らせた。
先にクランクインして、その間に横浜のロケの時に、喫茶店で黒沢さんと3人で「これから出てくるんだけど、どうする?」って話をした。
最初、冒頭のところでバイクで出てくる時に、足を撃たれる設定にしようかとか、いろいろ話して、そのまま、つえで…という話になった。
台本では、つえを使うことになっていないんです。
村川
彼は、ヤバいことをいろいろやってきて、足にボルトの2、3本でも入ってることにすればいいだろうと。
どんなことがあってもメゲずに、現場に来ることができる日程さえ逆算すれば、うまく使えばいいことで。
ケガの功名…言い得て妙ですが。
あの人は身体的能力もすばらしいから、事故があってから、ライブもやって、リハビリもうまくいっていると思った。
最後は、つえアクションになったね。
彼は勘もすばらしく良くて、バイクもうまかった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160129-00000081-nksports-ent7
日刊スポーツ 1月29日(金)14時17分配信
左から柏原寛司氏、村川透監督、黒沢満氏
村川
私たちは一騎打ちしてくれればいい。でも、単なるアクションばかりだと物足りないから、
バーのシーンがあって、時間をおいて、次は本当に肉体を使った戦いになる。
ケガしてもらって…というのも何だけれど、非常に得したわけです。
柏原
普通のワルと刑事の間にプラス(菜々緒が演じる)夏海が入ることで、1人の女を愛した男としての戦いがあるから面白い。
村川監督
彼らも、それをちゃんと理解してやっているから微妙な心の動きがあって、それをうまくやっていた。
-タカを演じる、舘のバイクアクションは健在だった
柏原
舘選手は毎回、必ず“手放しショットガン”は入れてくれと言うし、ないと怒るから(脚本に)入れるわけですよ(苦笑い)
今まで、タカが“手放しショットガン”を撃つ相手は、ずっと車だったんです。
(撃つと)いつも横転するとか…それじゃあ、つまらないので、最後だからバイク同士のアクションをやろうと思っていました。
仙元
たっちゃん(舘)や恭兵ちゃんが「これだけは撮ってほしい」、村川監督も「撮らないとしょうがないな」と言うものは撮るんです。
以前やったアクションは2度とやらない…でも、2度も3度もやるのは、たっちゃんがライフルを構え、撃つシーン。
「どうしても、あれをやらないと自分じゃない」ということです。
恭兵ちゃんは、走ることとリズミカルにステップを踏む、
という対照的なものを言ってきたから、それはどうしてもやるんです。
俳優が自分で手応えを感じて、面白いと言ってくれりゃ、我々も参加して何よりですよ。
-それぞれのキャラを、掘り下げている印象があるが
柏原
掘り下げたというより(10年が経過して)こうなってきているよ、というのをやった。
(浅野演じる)薫は犯人を逮捕するわけではないので、設定はいつも頭を悩ますところですけど、今回は結婚すると言って大騒ぎするという形にしました。
-老いていくところをごまかさず、走ったらきつい、というところなどを入れたのが生感がある。
村川
エッセンスが、そのまま持続するわけだから…(舘と柴田が演じる)タカとユージの2人が出会った時に、時間とか空間を全て乗り越え、
現在あるそのままが7本目だと、肌で感じられる作品だと思っています。
別に年取ったからどうということじゃなく、恭兵ちゃんは全速力で走りますよ。できることも分かっているし、何のてらいもなく、普通に面白い“あぶ刑事精神”をやりましょうや、というノリ。
役者さんはスムーズに入ってくれたし、俺の言うこともやってくれた。
恭兵ちゃんなんか、最初から乗ってくれた。
オープニングのカギを入れるところだけど、カット1は「ただ歩いてくるだけじゃつまらないよね」というところで、(柴田は)スパッと考えてくるからね。
それで、俺は「音楽、入れるね」っていう話だから。恭兵ちゃんも分かっていて、一気に現場に持ってくるよね。
みんな、現場もそれを期待している。とても楽しかった。クランクインも、あそこからなんですよ。
カギを開けるというテーマが、何を表すか…どのカットも、意味があるんですよ、僕の中ではね。
今までの延長で作りながら、郷愁を持った中で1カット、1カットの会話は面白いし、その上でバック、環境も変わっている。
見たら、クスッと笑えるところがいっぱいあると思うんですよね。
恭兵ちゃんにしても、たっちゃんにしても(年を取ったことを受け入れる)素直さと俳優としての格好良さを持ちながら仕事していたと感じています。
-カメラからのぞいた2人は変わった? 変わらない?
仙元
年輪が出てきたのと…30年前は、ひたすら若さだけで行動していた。
本人らも、自分自身の役を今ほど重く感じていなかったんじゃないかと思う。
今回は2人とも年はそれなりに食ったんだけど、やることなすことは若いし、自分らの役を、すごく大事にするのを今まで以上に感じました。
-タカと菜々緒演じる夏海との出会いは見どころ
村川
いいですね…今までにない。俺は好きだな。ダンスするシーンとか。(菜々緒は)まずは新鮮。良かった。彼女は大変だったと思う。
たっちゃんもダンスシーンは特にこだわっていたから、「ムーンライトセレナーデ」を流した。
あの場面は、僕の中で決まっていた。港に係留している船を、全部どかしてもらって、あのシーンはきれいに撮れた。成功していると思います。
黒沢
今回は変えてみたいというところも正直あって、その意味でダンスシーンなどを入れたわけです。
-横浜も30年で変わった
柏原
撮る場所も今回、昭和感のある横浜を狙おうと思っていて。
アクションシーンは横浜で撮れず、似た場所で撮りましたが、都子橋などロケ場所もこだわりました。近代的なところは、なるべく避けました。
-石原裕次郎さんの代表作「夜霧よ今夜も有難う」(67年)と同じ教会で、舘ひろしが演じているシーンがある
村川監督
俺が日活で「夜霧よ今夜も有難う」の助監督をやっていたんだよ。
おれが自分の車で裕ちゃんの家まで送り迎えしていて…その頃から知っている場所で、他にいっぱい候補はあったんだけど、俺が「あそこ」って言って、みんなを連れて行った。
きらびやかなだけじゃなく、ちゃんと伝統があり、DNAを継ぐものをやらないと、意味がないと思ったから。
横浜って今(撮影で)ドンパチはだめ、カーチェイスだめ、横転ダメ…あらゆることがダメ、禁止なんです。
それを克服していくのが、こうした(伝統を大事にする)部分なんです。
仙元
横浜でありながら(ロケ場所を)横浜で貸してくれない。
貸してもらいに行く場所で、担当者に「『あぶ刑事』はこれで終わりだから、古い横浜と新しい横浜を『あぶ刑事』で紹介します」という話をして、ロケハンしても聞いてもらえない。
ダメだったんです。
それで、地方になりました。
タカが薫の言葉で教会から出るシーンは、台本にはなかった。
急きょ(三重県)四日市で何とかシーンをつなげるように撮ったんです。
これは映画の仕事…大変と言っちゃうと、面白くない。
瞬間に、画が浮かぶんですよ。
台本読むと「画になる」というのがあるんですよ。
柏原
当初は復活の予定はなかった。
村川
ところが、全国に大事にして持っている人がいる。
-舘と柴田は脚本作りの段階から関わった。ここまでやったのは初めてだった
柏原
準備稿の段階から、会って話している。
タカと彼女のシーンなんかは、舘選手がかなりああやりたい、こうやりたいと、かなり言っていた。
-格好良くやりたい、というのが大事なポイントだと語っていた。
柏原
それは、毎回ですよ(笑い)原点回帰しているから、ハードボイルドの基本に戻ろうとしている。
恭兵選手のエッセンスも、かなり入っています。
我々、作る側とは別に、演じる側もキャラクターを余計、考えてきているから。
この10年間、どうしてきたか、この先、どうするんだろう…と考えていて(台本を)直したり。
-アドリブは?
村川監督
集まって、いっぱい話しているから、アドリブ風に見えて、作り込まれている。
高揚感が、さりげなく入っているから、アドリブ風に見えるし…それが7本目にちりばめられていると思うよ。
撮っていて、懐かしいとともに、今やっている役者として生涯かけてやっている…というのが、どれだけ俺を鼓舞してくれたか。
柏原
「ショウタイム!!」って言った部分は、最初から書き込んでいたかは分からないけれど…今回はアドリブは少ないですよ。
黒沢
(これまで出た俳優は)みんな、やっぱり(映画に)出たがりましたよ。
-撮影にはファンがエキストラとして参加した
仙元
今回のエキストラが、みんなファンだと(撮影の)途中で知りました。
助監督に「エキストラをチョロチョロ、勝手に動かすのは邪魔なんだ!!」と怒ったら、
次の日「全国にいるファンをインターネットで集めて来てくれています。勘弁してください」と言いました。
「そんなにファンを集めてくれたことを知らないで、ごめん。でも、俺の目の前でチラチラする(動く)のはやめてくれ」と言いました。
感動しましたよ。
数多くの人がすごいと言ってくれたら、これが最後になっていいですよ。
-日活、東映と渡り歩いた黒沢さんにとってアクションを作るこだわりは?
黒沢
単純なことなんですよ。
戦後、僕らが中学、高校の頃は、何を楽しみにしてるかといったらアメリカ映画。
アクションと西部劇の印象が残っている。
自分でもプログラムピクチャーで良いから、
アクションを作ってみたいという思いがあるんです。
柏原
舘選手、恭兵選手で刑事ものをやるという話で、役者さん次第で、このふたりがそろえば面白いものができるなと思っていました。
(30年続くとは)思いませんでした。
-2人はキープしている?
柏原
2人も最近は、アクションはやっていなかったりするけれど、根底にはアクションの要素や不良性が残っていて、それが今回、完結したという感じじゃないでしょうか。
-最後の締め方は柏原 今回、1番、苦労したのは締め方。最後は「あぶ刑事」だけに、シラーッと…ね(笑い)
最後の(仲村の)演説のシーンは、プロデューサーのこだわり。
考え方としては全員、昔のレギュラーを呼べるから。
-今回が最後
村川監督
終わる、終わらないというよりかは、やっぱり、みんなとこういう時間を持てた幸せかな。
全部、終われたという満足感は、他にも増してあった。
テレビは年間5本も作っているけれど、しばらくぶりの映画だったから。
また違った喜びと悲しみも、また振り返ってみたい気もしていたけどね。
柏原
ホッとしたのも1つだし、何となく寂しいのも1つ。
でも、ちゃんとした4人のキャラクターが旅立っていく…終わっていく、ケリをつけられたのは、いいんじゃないかという気がしています。
「終わる終わるサギじゃない」と(苦笑い)
-映画の出来は
黒沢
僕がこんなことを言ってはいけないんだけど、非常に面白かったですし、お客さんも多分、満足してくださるだろうなと思います。
村川
自分の作品は子どもですよ。
過不足もなく、理由なく楽しく、抱き締めたくなる作品。
柏原
役者の野郎、こんなふうに直せって言いやがってと思ったりもしたし、監督もこんな風に撮っちゃってと思ったりもしたけど、大変面白かった。
大満足です。
仙元
クランクアップして2日後に打ち上げがあった時、恭兵ちゃんが「仙元さんが、本当に(体が)持つかな…と思って心配していたら、何にも心配なかった」と言ってくれた。
そんなところを心配して、仕事してくれていたんだと、うれしくなった。
倒れないで、最後まで子どものように遊べたのは最高ですね。
-終わるにあたって「あぶ刑事」とは?
黒沢
日本テレビの方から「刑事ものをやりませんか」という話があって、話し合いを進めて決めていった作品。
僕自身どうなるか心配していた面もあった分、30年も続けたということになると非常に満足。
一緒にやってきて、監督とカンちゃん(柏原)にも助けられたと思ってます。
村川
パワーのある2人(舘と柴田)が会ったということは、偶然じゃなく、決められた中で会ったから、爆発するエネルギーは絶対、落ちないもの。
そういう2人とできたのがワンダフルだと思う。
「あぶ刑事」よ、永遠に…と思っています。
皆さんの(シリーズへの)期待が方々から聞こえてきて「やろう!!」と言って、俳優さんも来てできた。
1つだけ自分から言えるのは、作ることが目的じゃなくて、人に見てもらうために俺は仕事してきたんだ、という喜びは今回、感じましたよ。
柏原
いつも米国映画をやろうとしている。
うまくはまったし、舘さん、恭兵さんら役者さんに助けられて、米映画っぽい、いいものができたと思う。
客に受けることは最初、考えていないんだけど、
視聴者や観客に愛されたのは幸せなこと。うれしい。
元スレ: http://hayabusa8.2ch.sc/test/read.cgi/mnewsplus/1454050844/
横浜市は何考えてるんだ?
何故そこまで非協力的なのか?