「教えて！goo」にも「映画『君の名は。』はなぜ人気が出たのですか？」などの質問が寄せられている。

遅ればせながらAll Aboutで社会ニュースガイドを務めている作家の松井政就氏に人気の秘密を分析してもらった。
※一部ネタバレも含みますのでご注意ください。

■身体と心が入れ替わる……よくある設定だが

大半のユーザーには今さら必要はないかもしれないが、映画のストーリーを説明する。

ある日、離れたところに住む主人公の男女が夢の中で突然入れ替わり、戸惑いながらもそれぞれ日常生活が進んでいく。
やがて2人は夢だと思っていた世界が現実のものだと気付き、不思議な交流が始まる。

身体と心が入れ替わる話は大林宣彦監督の名作『転校生』をはじめよくある設定だ。
最近のドラマでは総理大臣の父親と大学生の息子が入れ替わる池井戸潤原作の「民王」もあった。

松井氏も「ほかにも古典に『とりかえばや物語』。小説では東野圭吾の『秘密』があり、娘の身体に死んだ母親の魂が入り込みます」と続ける。

既におなじみの設定なわけだが、「君の名は。」はある日を境にストーリーが思わぬ方向に展開。
「起伏に富んだストーリーでドンデン返しの連続で、観客はスクリーンに釘付けになる」（松井氏）のだ。

■祈りを重ねたくなる「物語のリアリティー」

松井氏はこの映画が爆発的に支持された理由に「物語のリアリティー」を挙げる。

奇想天外なストーリーながら、東京・四谷の須賀神社、新宿警察署裏の信号、岐阜県飛騨市、
千葉県佐原市の家具店、秋田県の前田南駅など実際のロケーションが随所で登場し、若年層を中心に聖地巡礼が始まっている。このことを指しているのだろうか？

「違います。科学的な事実かどうかという意味でもありません」と松井氏。
「物語のリアリティーとは、主人公に関わる出来事が、次の出来事が起きるための引き金となる形で必然的に起きていくことです」と説明する。

一度見たら他の展開が考えられなくなるような状態だそうだ。そして、松井氏は「この映画がひと味違うのは、
『こうなってほしい』『こうしてあげたい』と主人公の運命に観客が祈りを重ね合わせたくなる点なのです」と絶賛する。

■新海誠監督が魅せた力技

観客が入り込む要因として、松井氏は「秘密の共有」「大切なものを失う切なさ」「奇跡への願い」と3つのポイントを挙げた。
クライマックスに流れる挿入歌にある「嬉しくて泣くのは……」で始まる歌詞がその思いを後押しするという。

さらに「天災など悲劇に巻き込まれる映画は、悲劇にどう耐えるかを描いたものが多く、ハッピーエンドになることは稀です」とし、「しかし『君の名は。』の場合、
今の日本の若者社会があまりに希望を失っていることを意識したのか、新海誠監督が力技でハッピーエンドにした点が若い観客の心に刺さったのでしょう」と推察する。

これ以上ストーリーに触れるのは避けるが、「映画の出来は終わった後の観客を見れば分かります。これだけ目を赤くしている人が多かったのは記憶にありません」と松井氏。
アカデミー賞長編アニメ映画部門の審査対象にもなっている「君の名は。」は全国映画館で上映中だ。

http://news.livedoor.com/article/detail/12268790/
2016年11月11日 12時0分 教えて！goo ウォッチ