９月１７日公開の映画「怒り」。
原作は作家、吉田修一氏。李相日監督がメガホンを取った。

「悪とは、業とは、怒りとは何なのか。あまりにも多くを突きつけてくる。２時間２２分ですが、長さを感じさせない」（前出・映画ライター）

映画は東京、千葉、沖縄を舞台に３つのストーリーで構成。
直接混じることはないが、ある殺人事件が、別の場所にいる３人を関連づける。

東京では、藤田優馬（妻夫木聡）と大西直人（綾野剛）が男同士の関係でがっぷりと組む。
きちんとした暮らしぶりの藤田、大西は住所不定で過去を明かしたがらない。
くすぶる不信感。

ゲイの空気感を出すために、撮影中は２人で暮らしたという。鍛え上げられた肉体がぶつかり合う、
男と男のセックスシーンは生っぽく、においと衝撃と汗がスクリーンを通して伝わってくる。

千葉は東京・歌舞伎町で風俗嬢になった娘（宮崎あおい）を、漁港で働く父（渡辺謙）が奪還するところから始まる。

娘が不在の間に、漁港には前歴不明の田代哲也（松山ケンイチ）が働き始める。
やがて娘と一緒に暮らし始めるが、かつて偽名を使っていたことが判明し、疑心暗鬼の父と娘。

沖縄では、無人島で暮らすバックパッカーの田中慎吾（森山未來）と女子高生、小宮山泉（広瀬すず）を軸に物語が進む。
沖縄の地位、米軍基地の存在など現実的問題が立ちふさがる中、米兵による暴力が現実をずたずたに切り刻んでいく。

パズルのような３つの物語を、テレビの報じた殺人事件の指名手配犯の写真が結びつける。
似ているようで似ていないが、疑われる男がそれぞれの場所にいるという偶然。

　「過去を明かさない相手を信じ切れないゲイ、明かした過去を信じられない娘、秘密を守らなかったバックパッカーに裏切りを感じる少女。
“信じる”というキーワードが根底に流れる群像劇」
（前出ライター）

目の前の信頼する人が殺人犯かもしれないと、自分なりの核心を裏付けに思い込んだとき、
人はどう向き合うのか。重量感と鋭利な切っ先を突きつけられているような密度感が重くのしかかる。

「フラガール」（李監督）のように映画賞総なめとなるか。

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