東宝はなぜ『シン・ゴジラ』を庵野秀明氏に託したのか?
映画をまっさらな気持ちで見たい方は、ぜひ観賞後に読んでください。
私は7月30日、公開2日目に『シン・ゴジラ』を見に行って衝撃を受け、その日のうちにこんな記事を書いた。
→日本のスクラップ&ビルド、東宝映画のスクラップ&ビルド 『シン・ゴジラ』(Yahoo!個人/7月30日)
この記事では触れなかったが、エンドロールに出てきた「製作 市川南」のクレジットを見て秘かに歓喜した。
市川氏は以前宣伝部にいて、コピーライターとして私は仕事をご一緒したことがある。
その後、映画調整部に移ってヒット作をプロデュースしていたことは知っていたが、このゴジラのリニューアルというヘビーな作業も市川氏が指揮していたのは感激だ。
そこで、十数年ぶりに市川氏にお会いし、『シン・ゴジラ』誕生についてお話をうかがった。
そのインタビューのエッセンスをここでみなさんに読んでいただきたい。
東宝の伝統を背負うゴジラをいかに刷新したか、いろんな意味で参考になると思う。
—ゴジラの復活は、長らく配給に重心を置いていた東宝が、自社制作ももう一度力を入れていく大きな宣言だと受けとめました。
戦略的にそうなったと言うよりも・・・実は私はゴジラのプロデューサーをやるのはイヤだったんですよ(笑
『ゴジラ FINAL WARS』が2004年で、私は直接の担当ではなく少しお手伝いしてましたけど、思うように興行があがらずそれを機にお休みしてしまいました。
ハリウッド版が出たのがおととしですから、2014年、10年ぶりに世に出してもらって。
そのレジェンダリー版が発表になった頃から社内では「もう一回やったらどうだ」という話もでてきて、聞かないようにしてたんですけど(笑
でもよく考えると、レジェンダリー版が世界中で大宣伝してくれた後なら、十年休んでてもスタートラインが楽になるかなと思いました。
日本の若者もゴジラを認識してくれてやりやすいかなあと、レジェンダリー版の二年後にやろうとなったんです。
—『ゴジラ FINAL WARS』をやって、もう日本のゴジラはおしまいなのかと思ってました。
決めたわけでもなかったですが、やる気運が起こりませんでしたね・・・
でも世代交替も進んで先人たちの”型”を守ることもできなくなった分、まったく新しいゴジラに挑戦できそうな空気も出てきました。
最初のゴジラ以外は全部ゴジラが一度来た設定なんですよね。
84年の『ゴジラ』は今度のとすごく似てるんです。
小林桂樹さんが総理大臣で、アメリカとの関係とか、比べるとすごく似てます。
だけど最大の違いは、ゴジラが過去に来た世界なんです。
で、庵野さんと樋口(真嗣)さんとは「いまの日本にゴジラがはじめてきたらどうなるか」をやろうと。3.11を経験した日本に、ゴジラが来たら面白いですよねえと。
それが最初に決めたことなんです。
—ここでいちばん知りたいのは、東宝がゴジラを庵野秀明氏に託すことにした経緯なのですが・・・
2013年にジブリの鈴木(敏夫)さんが庵野さんと食事会をしてくれたことがありました。
鈴木さんが帰られたあと、庵野さんを送りながら「ゴジラって興味あります?」って言ってみたら「まあ、興味ないでもないですねえ」と言ってくれたんですね。
これは脈ありだなと思ってしばらくして二人で会って、話がはじまっていったんですよ。
—持ちかけたってことは「庵野さんにやってもらえたら」と言うより、積極的にやってほしい!と声をかけたんですね!
プロデューサーがプロット作って脚本作って監督を誰か選んで、特技監督選んで、っていうと、いままでの延長線になるなあと思ったんです。
誰かクリエイターに最初から頼んだほうが早いかなあと(笑
—それにしても庵野さんというのは、リスクと言うか、奇抜なゴジラになりはしないかとの懸念はなかったですか?(笑
シネバザール(制作会社)のプロデューサーに間に入ってもらったんですが、その時はもう樋口さんと尾上(克郎)さんがいてくれたんで三人監督で、みたいな気持ちでした。
庵野さんが脚本だけで樋口さんが監督、ということでもいいかなとか、保険をかけたわけですね。(笑
庵野さんがどこまでやってくれるのか、プロットだけなのか。そしたら脚本も書くっていうし、現場も総監督だっていうし。
いちばんのったパターンですね。脚本作りも「大人向けにしよう」と、女性とか子どもとか意識しない、と言われて、こちらも腹をくくりました。
一作目に極めて近いのをやりたい、主人公は政治家にしますと。
我々としては恋人がいたほうがいい、長谷川博己さんと石原さとみさんは元恋人にしましょうとか言ったんですけど、庵野さんはそういうのどんどん排除していって、人物たちのバックボーンは描かない脚本になりました。
ハリウッド映画だと絶対そういうサイドストーリーとかあるわけですけどね。
きわめてストイックな政治家だけの話になりました。
脚本の細部にも徹底的にこだわって、政治家にも官僚にも取材し、小池百合子さんにも取材してましたね。
首相官邸や危機管理センターにも行って取材するんですけど写真は撮れないそうで、スタッフが持っていた鞄で距離を測ってセットに再現しました。
—政治家と官僚のやりとりもすごいリアリティありますよね。
普通で言えば3時間分の脚本になって、いよいよ本当に監督をお願いする時に、あらためてぜひやってください、でも2時間にはおさめてくださいと言ったら、わかりました、撮れますよ、なぜなら早口で言わせるから、と答えました。
たぶん、1.5倍くらいの速度でしゃべっていて、だから入ったんでしょうね。
撮影でもこだわって、画面をミリ単位で指定するし、カメラ複数で撮るし、ものすごい早口を俳優に要求するし、アニメを作る感覚と同じだったんですよ、100%自分でコントロールするような作り方で。
CGの仕上げも半年間大勢で作業して、庵野さんのOKいつ出るかってみんなでやきもきしてましたね。
—作る側として、ゴジラという東宝の看板スターを、あんな風にしちゃってどうだったんでしょう。最初に出てくるもこもこ這うやつがキモチ悪くて(笑
あれキモチ悪いですよねえ(笑
—ええほんとうにキモチ悪くて、ゴジラはこいつと戦うのかな?と思ってたら・・・東宝人としてどうだったんですか?あるいは同僚や上司の方々が、ゴジラがああいうことでいいのかとか。抵抗感なかったですか?
私はありましたよ。
手だって小さすぎるんで、大きくしてもらって、造形はもちろんすごくチェックしましたね。
ただしっぽがこれくらい必要だとか、非常に説得されました。
抵抗感はありましたけど、まあそれやんないと変わんないかなあと思って(笑
生物体として庵野さんがおかしいって言うんですよ。あんなでかいのに二本足で立ってるってのも。完全生命体だから自分で進化できる設定にして、進化する過程で直立してるんだってことで説得されちゃいました。社内も、世代も変わってるんでそれに対する異論はほとんどなかったですね。十年作ってないから、過去のゴジラの呪縛が解けた時期だったんでしょう。
—正直私は公開時に期待してなくて、予告編みてもゴジラあんまり出てこないし面白いのかわからなくて。
でも土曜日の朝になったらtwitterで初日に見た人たちが大騒ぎでつい見にいったんです。
肝心なものは何も見せないあの宣伝は議論がなかったでしょうか。
これまでのゴジラ映画の宣伝は段階を経て、公開までに全部見せちゃうものでした。
庵野さんは、エヴァンゲリオンでは何も見せなかった、試写もやらなかったと言うんです。それでうまくいったんですよね。
結果としては完成披露試写会だけはやったり、記者会見やって少しだけ見せましたね。
あの最初の予告編は庵野さんが自分でつくったんです。
宣伝部がやりたいというので、もう少し見せてるのも作ったんですけどね。
—庵野さんじゃないとここまで斬新なゴジラはできなかったのでしょうね。
庵野さんは「ぼくは専門はウルトラマンです」って言っていて、ゴジラはそこまでのめりこまなかったらしく、そこもよかったのかもしれないですね。
岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』が大好きでその手法を取り入れたかったそうなんです。
ものすごく細かいカット割りで、ものすごい情報量。
凝縮する実写映画にしたかったんでしょうね。
庵野さんの『シン・ゴジラ』の次は、別のクリエイターの『続・シン・ゴジラ』とかもあるかもしれないですね。
いや、考えたりしてますよ(笑
東宝にとって宝物のゴジラだからこそなかなかリニューアルしにくいのを、思い切って庵野氏に託したから新しいものにできたこと、タイミングも今しかなかったことなど、いろんな意味で参考になる話だと思った。
なにより、日本映画がまた面白くなっていきそうでうれしい。
一度見た人も、このインタビューを読むともう一度見ていろいろ確かめたくならないだろうか。
ちなみに私も二回見たが、このお盆にもう一回見てしまう気がしている。
『シン・ゴジラ』は、ただでさえ熱い今年の夏を、さらに熱くしてしまったようだ。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sakaiosamu/20160812-00061026/
スレッドURL:http://hayabusa3.2ch.sc/test/read.cgi/mnewsplus/1470994026/
公開されたらなぜか庵野作品みたいになってるな。
樋口の名前が前面に出てたのって製作決定の第一報くらいだったよ
進撃の巨人の低評価が定まって以降は樋口の存在が無いもののようになってた
4回見た
初代好きにはたまらないでき
ゴジラとはこれだよ、この善悪を超えた力だ
初代とは全然完成度が違う。
もちろんそうだが
時代にあった恐怖といい
ゴジラへの人々の対峙の仕方がとてもいい
セリフを聞き取れなくても困らないような作りになっているんだけど、
逆に情報量の多さはヲタ心を満足させるようにもなっている
余計な会議シーンばっかりだったけど?
主要人物以外のキャラ造形はかなり記号的で、覚えやすいように作ってると思った
甘利さんに似てる大臣とか、余貴美子演じる小池百合子似の防衛大臣とか
日本映画もこういうクールな演出が出来るんだな。
庵野秀明とかよく知らなかったのだが、エヴァンゲリオンに逆に興味出てきた。
シンゴジラが赤いのは初代ゴジラ(ポスター)のオマージュだってさ
初代がそうだったとか
白黒でわからないけど実は赤かったって噂があるね
あとはエヴァの影響かな。これのロボットが赤くなったりする
昔から「ゴジラは赤く塗れ」って言葉があったろう
海外の描き方は多少ご都合主義めいたところがあるが
それでもストイックにリアルにつくられたことがありありと感じられた
ありがとう庵野 ありがとう東宝
生きててよかった
ハリウッドもビビると思うんだけどなー
いろいろ残念なところもあるけど、世界びっくりすると思うわー
向こうの反応はあまり期待しないほうがいいぞ
日本と海外じゃ感性の違いで反応がまったく違うからな
おまけにこのシン・ゴジラは明らかに日本向けの作り出し
まぁ、どれだけ外国の人が日本映画に興味持ってくれるかだな
今日公開した。海外では一番手に公開の日本が大好きな台湾も
評価割れているみたいだしな
まぁ、評価が割れてるということは、見た人それぞれの感性や立場で色々感じられてるってことだな
そういう映画になってるということはいいことだと思うわ
見苦しいよ
ハリウッドが何しようが関係ねえだろうが
ドンと構えてろや
10年も経てば組織の中の面子も大分変わるやろ
これで最後!と言った偉い人は一線を引いて、当時ぺーぺーだったやつらが第一線に立って、またゴジラやりますか!!って話になるんじゃね?
まあ歴史は繰り返すってことだ
シンゴジラ見てないやつは人生10分の1は損してる
それにこの出来なら、海外から監督のオファーあると思う
庵野がやる気はないかもしれないけどw
それでも観に行きたい人は行けばいい
マジでそれだけのためでもIMAX代払って良かったと思ったわ
コメント
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コメント (5)
庵野ってウルトラマン好きだけどゴジラにはそんなに詳しくなかったのか
やっぱこれは日本向け映画だよな。無駄で中身のない会議とか自衛隊の理念とか海外の人がそういう日本的なものに納得しづらそう
海外展開は絶賛のエリアが今のところない感じでもう評価から微妙だから、ゴジラ受けの過去の実績のある東南アジア以外じゃ無理じゃないかな?
ただ東南アジアに展開しても大した金にならないしそこから違法流通が明確に始まるからそこで終わりなんだよな。
日本人が楽しめりゃそれでいいとは思うけどね。
単純に庵野のパチンココネクション狙いじゃないかな?庵野個人がそれほど高い評価を期待されて選ばれてたとは近年の失調を見るととても思えん。
東宝は深刻な資金不足をずっと言われてるやん。生み出す邦画が尽く酷い今の邦画産業じゃ仕方ないだろうけど。
CRシン・ゴジラか
必要のない恋愛ドラマや家族愛ドラマが無いことを評価してる人と、それがないことが話に深みがないと言ってる人が居ることからみても、評価する部分が同じで賛否が分かれてるわけです。
ならば、今まで無かった「そういうのを排除してる映画」が混じることは良いことではないかと思う。そういうのが好きな人は、そういう映画は山ほどあるからそれを見ればイイわけだし。