イージーライダー
マリファナの売買で、ちょっとした財産を築いたキャプテン・アメリカ(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)が、ハーレイ・ダビッドソンに跨り、旅に出るところからこの物語は始まる。
町を捨て、時計を捨てる姿は、これからは時間に縛られず、自由気ままに生きていくという、意思表示を示している。
村から村へとバイクで流す二人だが、途中で酔っぱらいの弁護士ジョージ(ジャック・ニコルソン)と知り合い、3人での旅となる。しかし彼等は、沿道の村人たちに全く受け入れられない。レストランでも歓迎されない。保守的な人々は、彼らの身なりだけで、”胡散臭い”と見るのだ。自分たちとは、全く違う人種、異邦人とみなし、やがて悲劇へと向かっていくことになる。
マリファナ、人種問題、ベトナム戦争、既存社会に反抗する若者といわゆる常識派で保守的な大人との断絶等、数多くの問題を抱えて喘ぐ”巨大国家アメリカ”の姿をヤングジェネレーションの目を通して余すところなく描いている。
ジェーン・フォンダを姉に持ち、名優ヘンリー・フォンダの息子であるピーター・フォンダが、初めてプロデュースした作品で、彼の親友デニス・ホッパーも初監督している。脚本も二人で書きあげ、まさに二人が作った作品だ。
サイケデリックな映像と反体制派ミュージシャンを結集して音と画面を結び付けている。サイクリングシーンに流れる音楽は、ステッペン・ウルフの”プッシャー”に始まり、代表曲”ワイルドで行こう”ザ・バンドの”ウェイト”等、すべてロックであり、当時の10代後半から20代の若者に圧倒的支持を受けた音である。ジミヘンやエレクトリック・フラッグなど、サイケ・ミュージックの走りである。
しかも驚くのは、ラストシーンに流れる、バーズのリーダー”ロジャー・マッギン”が歌う美しいスローバラード”イージー・ライダーのテーマ”を除き、この映画のために作られた曲ではないということである。ヒット曲を集めたものだが、実に映像とマッチして、我々に訴えかける。ピーターのセンスが窺われる。
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